ジャイアントパンダの上顎大臼歯




 多くの哺乳類の上顎大臼歯では,4つの咬頭がある場合,paracone(近心頬側咬頭),mecacone(遠心頬側咬頭),近心舌側咬頭(protocoone),遠心舌側咬頭(hypocone)から構成される。Hypoconeは,4咬頭の中では最後に出現する咬頭で,lingual cingulumから現れる。
 ただ,Ailuropoda melanoleuca(ジャイアントパンダ)の遠心舌側咬頭はlingual cingulum上になく,lingual cingulumが遠心舌側咬頭を取り囲んでいる。実は,この咬頭は,metaconuleという小咬頭が大きくなったものと見なされている。
 おもしろいことに,同じような形状の遠心舌側咬頭を持つ化石霊長類が存在した。Notharctusと称される中期中新世の化石がその代表といってよい。しかし,この遠心舌側咬頭は,hypoconeでもmetaconuleでもない。一般に,pseudohypoconeと呼ばれている構造である。